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コンセプトデザインとは?誤解されがちなイメージとその重要性を解説

2025年04月23日

「コンセプトデザイン」という言葉は、クリエイティブ業界では頻繁に使われます。 しかし意味が曖昧なまま使われているケースも少なくありません。 本記事では、コンセプトデザインという言葉の持つ意味や誤解する […]

「コンセプトデザイン」という言葉は、クリエイティブ業界では頻繁に使われます。

しかし意味が曖昧なまま使われているケースも少なくありません。

本記事では、コンセプトデザインという言葉の持つ意味や誤解する背景、なぜ必要とされるのか解説します。

コンセプトデザインの正しい意味

コンセプトデザインとは、プロジェクト全体の方向性を定義するための基盤となる設計思想のことです。

見た目だけでなく、価値観、体験、メッセージといった抽象的な要素を視覚や形状に落とし込むための「羅針盤」とも言えます。

コンセプトを明確にすることで、関係者間の認識を揃え、一貫したアウトプットを生み出すことが可能になります。

よくある誤解とその背景

初期アイデア=コンセプトデザイン?

コンセプトデザインは「最初のラフ案」「とりあえずのアイデア」と誤解されがちです。

しかし、本来のコンセプトデザインは偶発的なひらめきではなく、リサーチや戦略をもとに設計された意図のある計画です。

むしろ、その初期アイデアが生まれる前提をつくるのがコンセプトデザインと言えます。

プロトタイプとの違い

プロトタイプは「試作」「試しに動かしてみる」ためのものですが、コンセプトデザインはその土台を形作る思想やルールです。

たとえばWebサイトであれば、配色やフォント、レイアウト、トーン&マナーを決定する“核”を構築することがコンセプトデザインの役割です。

コンセプトデザインが必要な理由

プロジェクトを推進する中で、さまざまな判断が求められる場面があります。

デザインの方向性、言葉遣い、ユーザー体験、そして時には採用する写真素材のトーンやイラストのタッチまで。

そのすべてに一貫性を持たせるためには、「何を伝えたいのか」という明確な軸が必要です。

ここで活きるのがコンセプトデザインです。

たとえば、ある飲料ブランドのリブランディングを進めるケースを考えてみます。

対象は若年層で「自由」や「自己表現」をキーワードに掲げているとします。

このコンセプトがあれば、ビジュアルは鮮やかでカラフルな色使いが適し、フォントは個性的なものを選択する判断がしやすくなります。

また、言葉選びもフォーマルではなく、フレンドリーでカジュアルなトーンを用いると自然です。

逆に、コンセプトが曖昧な状態で制作を進めてしまうと、「人によって基準が異なる、主観に基づいたかっこいいデザイン」「よくある言い回し」「場当たり的な機能追加」といった場面が増え、最終的なアウトプットに統一感がなくなってしまいます。

UIデザインではミニマルを意識していたのに、プロモーションビジュアルは派手で、コピーは硬すぎるというように、ユーザーに「結局このブランドは何が言いたいのか?」という印象を与えかねません。

コンセプトデザインを決定するための3つの重要ポイント

コンセプトデザインは、プロジェクト全体の“軸”となる存在です。

ここでは、コンセプトデザインを決定する上で押さえておきたい3つの重要なポイントを解説します。

「誰に届けるか」を明確にする|ターゲットの輪郭を描く

コンセプトデザインを定める第一歩は、「誰のためのプロジェクトか」を明確にすることです。

ターゲットの年齢、性別、ライフスタイル、価値観など、可能な限り具体的にイメージします。

たとえば、「20代の都市部で働く女性」に向けるのか、「子育て中の30代夫婦」に向けるのかで、必要なトーンやビジュアルは大きく異なります。

ユーザー像が鮮明になることで、表現すべき世界観の“輪郭”が自然と浮かび上がってきます。

「何を感じてほしいか」を言語化する|感情と体験の設計

届けたい相手が決まったら、次に「その人にどんな印象を与えたいか」「どんな体験をしてもらいたいか」を明確にします。

これは単なる情報伝達ではなく、ブランドやサービスを通じて感情を動かすための設計です。

たとえば、「安心感」「親しみやすさ」「ワクワク感」など、狙いたい感情を具体的に言葉にし、それをデザインやコピー、映像にどう落とし込むかを考えます。

感情に訴えることができると、プロジェクト全体の魅力や記憶への定着度が格段に高まります。

「世界観を支える要素」を定義する|ビジュアルとトーンの統一

上記で導いたターゲットと体験設計を踏まえて、具体的なビジュアル表現の方向性を定めます。

配色のトーン(暖色か寒色か、彩度はどうか)、フォントの雰囲気(繊細か力強いか)、写真や映像のスタイル(ドキュメンタリー調か演出重視か)などを体系的にまとめていきます。

これにより、関係者全員が「このプロジェクトにふさわしい表現とは何か」を共有でき、アウトプットのブレを防ぐことができます。

このように、「誰に」「何を」「どう伝えるか」の3点を明確にすることで、コンセプトデザインは単なる言葉の羅列ではなく、実行可能な設計図へと変わります。

プロジェクトの初期段階でこの作業を丁寧に行うことが、最終的な成果物の質を大きく左右します。

コンセプトデザインが活きた事例紹介

コンセプトデザインの力は、表面的な装飾ではなく、ブランド全体の体験や印象を深いレベルで形づくります。

ここでは、コンセプトが見事に機能した具体的な2つの事例をご紹介します。

ユニクロ「LifeWear」|日常に根ざすシンプルな思想の可視化

ユニクロが掲げるブランドコンセプト「LifeWear」は、「すべての人の生活を、より豊かにする服」という思想を軸に展開されています。

シンプルかつ普遍的なコンセプトは、商品開発から店舗デザイン、広告、Webサイトに至るまで一貫して反映されています。

広告ビジュアルでは、モデルが日常的なシーンで自然に服を着こなしており、決して過剰な演出はありません。

配色も落ち着いたナチュラルトーンが中心で、余計な情報を排したレイアウトが「暮らしの中に溶け込む服」という世界観を静かに伝えています。

商品ページのコピーも、流行語や派手な訴求を避け、機能性や着心地といった実用的な価値にフォーカスすることで、「LifeWear」の思想が言語でも伝わるよう工夫されています。

このように、「コンセプトを起点に、すべての表現要素が意思を持って設計されている」ことで、ブランド体験に統一感が生まれ、生活者の共感と信頼を得ています。

無印良品|素材と生活に寄り添う「余白」の表現

無印良品もまた、コンセプトデザインが徹底されているブランドの一例です。

ブランドの核にあるのは「わけあって、安い」「感じ良いくらし」という思想。

これは「本当に必要なものだけを、質素に、丁寧に」という価値観を背景にしています。

店舗設計では、木材やコンクリートなど自然素材を活かした空間設計がされており、過剰な装飾を避けることで“余白”のある空間体験を演出しています。

商品パッケージは一貫して簡素で視覚的ノイズが少なく、視覚的な一貫性がブランド全体の空気感を支えています。

さらに、Webサイトやカタログ、プロモーション映像に至るまで、「主張しすぎないが、確かに在る」デザイン哲学が貫かれており、ブランドの理念が視覚・言語・体験のすべてで表現されています。

このように、ユニクロや無印良品といったブランドは、コンセプトを単なる言葉にとどめず、表現のすべてに落とし込むことによって、ブランドとしての“世界観”をユーザーに強く印象づけることに成功しています。

コンセプトデザインの作成必要なデザイナーのスキル

コンセプトデザインを決定するには、デザイナーが持つべき重要なスキルがあります。

抽象的なコンセプトを具体化する力

デザイナーは、クライアントやブランドの核心となる価値や思想を抽出し、それを視覚的な表現に翻訳する能力が必要です。

コンセプトはしばしば抽象的であるため、その本質を掴み、具体的なデザインに落とし込むスキルが求められます。

ビジュアルの統一感を保つアートディレクション力

コンセプトデザインには、配色、フォント、レイアウトなどのビジュアル要素の整合性が求められます。

デザイナーは、全体のデザインが一貫してコンセプトを反映するように細部まで調整し、視覚的に統一感のある表現をするための知識を持つことが重要です。

コミュニケーション能力と説得力

コンセプトデザインをチームやクライアントと共有し、理解を得るためには、ビジュアルを言語化し説明する力も求められます。

コンセプトの意図を効果的に伝え、関係者を納得させるための説得力が必要です。

アイディアの提案から実装まで伴走するクリエイティブチームの強み

コンセプトデザインは、明確な仕様や答えがあるわけではなく、曖昧さや感覚的な判断を伴うプロセスの先にあります。

言語化しづらい価値観や世界観を、誰もが共有できるかたちに落とし込むには、丁寧な対話と多角的な視点が欠かせません。

アイディアの種を一緒に育て、実装・運用まで一貫して支える体制が重要になります。

kazeniwa Creative Teamは、単なるデザイン制作にとどまらず、ビジネス課題の整理からコンセプトの立案、アイディアの展開、表現の最適化、そしてアウトプットの品質管理までを一貫してサポート可能です。

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